22 冷凍機の仕様を決める

20,21で各設備の冷却熱量を決めました。

それらを全部足せば冷凍機の必要能力が決まります。

 分散機(昼):120,400[kcal/hr] ← 日中に稼動

 分散機(夜):338,496[kcal/hr]  ← 夜間に稼動

 空調(工場):343,467[kcal/hr]  ← 日中に稼動

 空調(ブース):148,972[kcal/hr]  ← 日中に稼動

 溶剤再生装置:263,501[kcal/hr]  ← 冷却塔

日中に稼動するものの合計612,839[kcal/hr]が最大値となるので、これが冷凍機に求められる能力ということになります。繰り返しになりますが、夜間と昼間の稼動を考慮するだけで、かなりのメリットがあるので気をつけて能力を検証しましょう。

冷却塔に求められる冷却能力はそのままの263,501[kcal/hr]です。

ここまで決まれば、後はメーカーにカタログを参考に決めていくだけです。

ただ、冷凍機、冷却塔といっても多種多様で、初めて機種選定をする場合は、選定の基準に悩むものです。最近でこそ、空冷式や水冷式の冷凍機にモジュラータイプというのがあって、実質的に能力の上限がありませんが、一昔前は事情が異なっていました。まず、冷凍機の特徴について、注目しておきましょう。

空冷式冷凍機

設備構成要素が少ない(基本的には冷凍機とポンプが1台あればOK)。冷凍機単体としてはCOPが比較的悪い(3~4)。冷凍能力に対して設置面積が大きい。イニシャルコストが比較的安価。

水冷式冷凍機

冷凍機を冷却するための設備が必要なので、設備構成要素が多くなる(冷却塔が必要)。COPは空冷式と比較して大きく(4~6)、冷凍機の冷凍能力に対して設置面積は小さくて済む。ターボ冷凍機なども水冷式冷凍機の一種(圧縮機の違い)。設備全体としてのイニシャルコストは中程度。エネルギーに電気を使用するので、大型の冷凍機を導入する場合、一次側電源工事が必要になる場合がある。

吸収式冷凍機

設備構成要素は水冷式冷凍機と同じ。換算後(COPは一次側のエネルギーと冷凍能力の比で表現するので、電気エネルギーに換算する必要がある)のCOPは空冷式と水冷式の中間程度。小型のものはないので、一定以上(100USRt以上)の冷凍能力を必要とする場合で、電源が確保できない場合に採用することがある。駆動部を持たない冷凍機なので、イニシャルコストは水冷式と比較して安価。エネルギーに蒸気とか燃料油(軽油とか灯油)を利用するので、エネルギーの供給体制が必要。でも、電気も使うから、停電になると動かない。

求められている冷凍能力は612,839[kcal/hr]です。

冷凍機はどの方式を選定しましょうか?

個人的な好みですが吸収式冷凍機が嫌いです。メンテナンス性が悪く、オーバーホール費用を含めたランニングコストが高いからです。そんなわけで、吸収式冷凍機は選定しません。それでも吸収式冷凍機を選定する場合は、すでに熱源となる蒸気や燃料油を供給できる場合、そもそも供給できる電気容量の制限があって動力に電気を利用する空冷式や水冷式を採用できない場合、設置スペースの制限がある場合です。

今回は動力や熱源の問題がないので、空冷か水冷です。

空冷とした場合に問題となるのは設置面積です。設置面積がOKなら、空冷式にデメリットがほとんどありませんので、私なら、この時点で空冷式に確定です。水冷式なら冷凍機本体を建屋内に設置できるので、屋外に設置するのは冷却塔になります。冷却塔の大きさは空冷式冷凍機の設置スペースと比較して同じ冷凍能力ならはるかに小さくで済むので十分に設置可能です。吸収式冷凍機でもほぼ同じです。

ここで注意しておきたいのは、空冷式、水冷式、吸収式のいずれにしても、複数台の冷凍機で必要な冷凍能力を満足させるように計画をすることです。もし、1台が故障しても残りで製造を続けられるからです。今回のケースであれば、必要な冷凍能力を2台の冷凍機で満足させてやれば、1台が故障しても、空調さえ止めれば製造が続けられます。

でも、ポンプの仕様を作成するのがそもそもの趣旨なので、あえて水冷式を採用してみます。

次回からは、冷凍機を中心に設備仕様を確定していきます。

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