14 低温倉庫の空調

 前回は試験室の空調について説明しました。温湿度条件と風量さえ決めてしまえば、低温倉庫でも考えは同じです。

 危険物倉庫は最大で1000m2が上限(消防で決まっています)なので、1000m2の倉庫を考えます。外気条件は塗装ブースのときと同じ37℃の88%とします。目標は20℃で湿度成り行き(100%)とします。

 まず、比エンタルピーを確認します。

 38℃、88%のとき比エンタルピーは127kJ/kg[DA]で、20℃、100%のときは58kJ/kg[DA]です。よって、この差である69 kJ/kg[DA]が必要な冷却熱量ということになります。

 次に風量の計算です。

 倉庫の高さはキリのよいところで、5mとします。よって、倉庫の容積は5000m3となります。

 倉庫に局所排気設備が備わっていることはありません。緊急用の排煙装置ぐらいなので、通常字は積極的な排気はないものと考えます。

 では、何をもって風量を決めるかというと、私は換気回数を基準にします。

 一般家庭の場合、最近の家やマンションなら、換気回数は5回程度です。事務所とかで10回ぐらいです。倉庫は?わかりません。建築の品質次第です。換気階数を小さくした方が何かと有利ですが、そうするためには建物の気密性を上げることになります。最近の家やマンションは省エネ性を向上させるために、気密性が良くなっているということです。

 建物の気密性を向上させるためには、建物の材質と施工精度に関係します。危険物倉庫の場合、使用できる材料に制限が多くあります。特に気密性に大きく影響するシール材なんかは制限ありまくりです。何より問題なのは、気密性を建物の仕様として規定できない(建ててみないとわからない)ので、前提条件として考慮のしようがありません。

 そんなわけで、私は換気階数を20回として計算してしまいます。事務所が家やマンションの倍、倉庫はさらに倍という感じです。 というわけで、風量は

 5000m3×20回/hr=100000 m3/hr

 となります。

 これで、必要な冷却熱量が計算できます。

 100000m3/hr÷0.93m3/kg[DA]=107526.88kg/hr

 69kJ/kg[DA] ×107526.88kg/hr=7419354.7kJ/hr=1.77×106kcal/hr

 温度差を5℃とすると、冷水の流量は5911L/minというのが導かれます。こちらも、塗装ブースと同様に、空気と冷水の温度差20℃以上確保できないので、冷水流量には余裕を持たせましょう。

 仮に空調機(ファンコイルユニット)1基当たりの冷水流量を200L/minとすると30基のファンコイルが必要となります。空調機を設置したことのある人なら感覚的に多過ぎると思う人もいると思います。実際には12~15基ぐらいにするのが正解だと私も思います。『ちょっと過剰な冷却熱量かな?』と思える感覚は重要です。 『例』なので、結果はどうでもよいのですが、実際問題として、必要な冷却熱量が1.77×106kcal/hrだと、約500kW相当の動力を持つ冷凍機が必要になります(必要な冷却熱量の1/3程度が必要な動力または熱源となります)。1日の電気代だけで20万円以上となります。空調機の基数も多すぎますが、電気代もちょっとやりすぎな気がしませんか?

 そんなときのテクニック。

 天井をギリギリまで低くする。換気回数を1回でも減らす。外気条件を甘くする。

 私の感覚だと、外気条件を厳しくしているなら、換気回数は15回まで減らしてOKです。なぜ15回にしないかというと、建物が手抜きだったり、運用が杜撰だったりすると、能力不足に陥るからです。

 建物の気密性に注意して建てて、出入口に自動扉をつけて外気の侵入を防ぐなど工夫をしていたら、換気回数を10回まで減らしてOKです。さらに、天井(屋根と天井はちょっとちがう)を設置して、壁および天井に十分な断熱処理がしてあれば、換気回数を5回まで減らしてOKですが、ほとんどそんなことはありません。

 よくわからないけど、断熱はしてある場合も換気回数は15回でOKです。

 次回からは、分散機と空調以外のものを説明していきます。

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