撹拌機マスターへの道 4

前回は速度分布について整理しました。管壁近傍を撹拌翼近傍に置き換えて考えるとイメージできると思います。撹拌翼の近傍は速度勾配が大きくせん断がよくかかるが流速は遅い。撹拌翼から離れるにしたがって流速は速くなっていくが、速度勾配は緩やかになりせん断がかからなくなる。このことが流体の粘度特性に対して様々な作用を与える。

今回は撹拌翼の種類を整理していきます。

撹拌翼の分類は一般的に基準がなく、液特性や容器の形状などが決まっていたとしても、各種条件から必然的に撹拌翼の形状が決まることはないと思います。撹拌翼の決定は経験則がスタートになっていると思います。自社で経験したことのない撹拌条件が必要な場合は、経験則を拡張させるか、他社やメーカーのノウハウと利用する、もしくはさらに拡張させるかして撹拌翼を決定することが一般的かと思います。理屈は後付け。後付けでも理屈がないと仕様を拡張できないので必須のことです。

具体的に撹拌翼の種類を見ていきます。
何を基準に分類するか悩みましたが、大きな分類として乱流用と層流用に分けます。

乱流用撹拌機

ここで説明する乱流用撹拌機は、撹拌羽で意図的に作り出した放射流もしくは軸流により容器全体に乱流を生み出すことを目的しているものです。放射流は撹拌翼の回転方向に生み出される流れのことで、軸流は撹拌機から生み出される軸(シャフト)方向の流れでのことです。実際にはこれらが合成されて容器全体に流れを生み出すことになります。生み出された流れが大きければ結果として乱流となります。乱流になると流れが乱れるので、位置交換が多く発生し、速度変化も大きくなることからせん断も発生するので、均相系でも異相系でも有効な撹拌です。極端に粘度が大きい場合は極端に大きなエネルギーが必要になったり、せん断をあたえることで粘度が増大するダイラタンシー流体などの特異的な粘性挙動の場合は不向きとなります。

放射流主体の撹拌翼

主として撹拌翼の回転方向流れが生み出され、流れが容器壁面にぶつかって、容器全体に流動が生まれる。

軸流主体の撹拌翼

放射流の撹拌翼に傾斜を持たせて、流れ方向を軸方向に変換した形。一般的に容器内の液面上部には空間があり流れを上に向けても波打つだけなので底に向けて流れを作り、そこに流れをぶつけることで容器全体に流れが生まれる。

放射流の比率を高めた後退翼

イメージとしてはより高速で回転できるように工夫して放射流の比率を高めた撹拌翼。

層流用撹拌機

層流用撹拌機は均相系で容器内全体を均一にする手助けをする。混ぜるよいうより、同じ位置に留まらせないようにしている。例えばコンクリートなどを輸送するミキサー車は内部にヘリカルリボン翼のような構造と邪魔板を持っていて、重量の力を借りながら常に同じ位置に留まらせないようにしてコンクリートが固まるのを抑制している。ジャケット構造をもつ容器で高粘度の流体を加熱冷却する設備であれば、容器壁面近傍だけが加熱・冷却されるのはよろしくないので、容器壁面近傍の流体を入れ替える。

大まかにはこのような分類になると思います。
これらは基本的な形であって、各社が様々なノウハウで様々な形の撹拌翼を製作しています。
どんなに複雑な形であっても、流体の粘度特性に合わせて流れの方向をどう作るか検討して作られています。

次回からは撹拌動力について整理を始めます。

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