撹拌機マスターへの道 2
前回は撹拌の分類をしました。今回は液の粘度特性を整理しておきます。
ニュートン流体
せん断速度によらず粘度が一定の液体。水、塩類水溶液、希薄溶液、水あめ、グリセリン、鉱物油。感覚的に液体というとコレ。流体力学で使うベルヌーイの式などはニュートン流体が前提。
せん断応力とせん断速度の関係は比例関係。グラフの形は傾きが粘度の1次関数で切片は0。
非ニュートン流体
多くの種類がある。総じてせん断速度によって粘度が変化する。
グラフの形は粘度の特性で色々変わる。
塑性流体(ビンガム流体)
ある程度の力を加えないと流動しない流体。よく例えられるのはバターやマーガリンみたいな個体のような液体。
一定以上のせん断が加わると流動する(=せん断速度によって粘度が変化)。
難しくいうとせん断応力(せん断速度×粘度)に降伏値を持っていて、降伏値を過ぎるとニュートン流体。
せん断応力とせん断速度の関係は切片を持つ比例関係。グラフの形は傾きが粘度の1次関数だけど切片が降伏値。
擬塑性流体
力を加えることによって粘度が下がる流体。降伏値を持たないのが塑性液(ビンガム流体)との大きな違い。
マヨネーズとかケチャップに例えられる。
日常生活で液体と認識してるけど、最後は絞り出したり、振り回して使い切るやつ。
せん断応力とせん断速度の関係は上に弧の曲線となる。
ダイラタント流体
擬塑性の逆。力を加えると粘度が上がる液体。よく例えられるのは水溶き片栗粉。
でも片栗粉は水に溶けていません。分散しているだけ。
液中に大量の個体粒子を分散させた状態(個体粒子同士がギリギリくっつき合わない状態)があると発現。
そんな状態は日常生活にはほとんどないのでイメージが湧きにくい。
液中に大量の個体粒子が分散されていると、ちょっとした力で個体同士がぶつかり合うようになる。
個体粒子同士がぶつかると摩擦とか反力が発生しあって抵抗になる。この抵抗が粘度として発現する。
チクソトロピー流体
擬塑性流体と同じく、力を加えることによって粘度が下がる流体。よく例えられるのはペンキ。
違いは力を取り除いて、すぐに粘度が戻るかどうか。
すぐに粘度が戻るものは擬塑性流体、しばらく経って戻るものはチクソトロピー流体。
難しくいうと、粘度変化に時間のパラメーターが入るものがチクソトロピー流体。
レオペクシー流体
チクソトロピーの逆で力を加えることで時間の経過とともに粘度が上がる流体。
力を加えることで粘度が上がるのはダイラタンシーと同じ。
よく例えられるのは粘土の懸濁液などだが、ピンとこない。
本当は違うけど、卵白とメレンゲの例えの方が私はピンとくる。
卵白はゾル状(流動する)だが、メレンゲは空気を卵白に分散させることでゲル状(流動しない)になる。
水を卵白、粘土を空気に置き換えると、力を加えることで分散が進み、粘土粒子の距離一定以下になると水と粘土粒子で何かしらの構造を形成して粘度として発現する。粒子同士が直接ぶつからないところがダイラタンシーとの違い。
レオペクシーが発現する条件が狭いようで身近な例がないのも特徴。ダイラタンシーの特異点ぐらいのイメージの方が近いのかもしれない。
次回は速度分布について整理しておきます。