13 試験室の空調条件
前回は塗装ブースの説明をしましたが、冷温倉庫や試験室との違いは空気が循環するかどうか。
塗装ブースの場合は、せっかく空調した空気を全て捨てるので、目標とする温湿度にまで常に外気を空調する必要があります。塗料に含まれる溶剤蒸気などの有害物質を循環できないからです。反対に倉庫や試験室だと一部は循環空調となっています。
具体的に試験用の恒温恒湿室を考えてみましょう。
よくやるパターンです。
実験室の一角に部屋の大きさ4m×3mで高さ3mの恒温恒湿室を設けたとします。
若干の有機溶剤を使うので、局排が4箇所付いています。給気は扉の下に取り付けたガラリからとしました。
目標にする温湿度条件は20℃、65%です。
どっ
どこから手をつけましょう?
塗装ブースと同じで。外気条件と風量がわかれば、必要な冷却熱量は計算できます。まずは、外気条件を決めておきましょう。
今回の場合は、実験室の空気を取り入れるので、実験室の空調条件が外気条件とみなされます。実験室では一般的に28℃で湿度成り行きの条件を採用します。ということは、恒温恒湿室の外気条件は最も過酷(比エンタルピーが最大)な28℃、100%の条件を採用することになります。湿り空気線図をみれば分かります。 28℃、100%から20℃、65%の露点である13℃まで空気を冷やす必要があります。冷水の温度を10℃とすると、温度差は3℃しかありません。理想の温度差は20℃です。ここらの理屈がわからない人は気軽に設定を18℃にして欲しいとか要求しますが、冷水だと無理です。
28℃、100%のとき比エンタルピーは90kJ/kg[DA]で、13℃、100%のときは37kJ/kg[DA]です。よって、この差である53 kJ/kg[DA]が必要な冷却熱量ということになります。本当は加熱や加湿も必要なんですが、それはまた別の機会にします。
次に必要なのは、風量です。
風量を想定するには、冷却とは別の知識が必要になってきます。 それは、局所排気の風量についてです。
有機溶剤とかの揮発性があって、有害なものを取り扱うときは、法律で換気することが義務付けられています。
今回の例だと、吸い込み口が4箇所あることがわかりますね。でも、それだけです。本来なら、吸い込み口の形状によって、風量が大きく変わるので、吸い込み口の形状まで設計することになってしまいます。一方で、ダクトの太さによって排気できる風速の上限が設備標準で謳われています。今回の例であれば、10m/sとなります。ダクトの径はφ100なので、風速が分かれば風量が分かるということになります。
ダクトの断面積:(100mm÷2)2×π=7850mm2=0.00785m2
排気風量:0.00785 m2×10m/s×4箇所=0.314m3/s=18.84 m3/min =1130.4 m3/hr
恒温恒湿室の容積は4m×3m×3m=36m3なので、
1130.4 m3/hr÷36m3=31.4回/hr
部屋の空気が入れ替わる計算となります。これを換気回数と呼びます。この考え方は重要なので、記憶の片隅に残しておいてください。後から出てきます。
比エンタルピーの差と風量が分かれば、必要な冷却熱量が計算できます。
1130.4 m3/hr÷0.875m3/kg[DA]=1292kg/hr 53kJ/kg[DA] ×1292kg/hr=68476kJ/hr=1.64×104kcal/hr
温度差を5℃とすると、冷水の流量は54.6L/minというのが導かれます。こちらも、塗装ブースと同様に、空気と冷水の温度差20℃以上確保できないので、冷水流量には余裕を持たせましょう。
実際には、局排で目一杯の排気をすることはほとんど考えられないので、この条件で十分な余裕が出ます。
次回は低温倉庫について説明します。
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