なかなか理解されない流体力学の難しさ
仕事柄、気体にしろ液体にしろ、流体を扱う機器の仕様を目にします。
業界として化学業界に属していますが、化学の構造式とだけ向き合ってきたような人がもてはやされる業界です。
とうぜん、そういう人が偉くなったりするわけですが、そういう人に限って、世の中は原理原則で動いていて、先人たちが原理原則を見つけているはずで、専門業者なら設計できると信じているフシがあります。逆の立場なら、どんな病気も治せる薬が作れるというのと同じくらい無理なこと無茶なことですが、世界が狭いの気づかないし、専門外のことは自分以外が考えるべきと思考を停止する人が多いのも、この手の人たちに共通します。
愚痴はさておき、流体を取り扱う式は理想的な流体を基礎にニュートンの法則に適合するようにできていることが多いです。
理想的な流体というのが曲者です。
気体でいうと理想気体。液体でいうとニュートン流体です。
私が普段取り扱う範囲であれば、気体は問題になることがほとんどありません。理想気体で想定した式を適用しても誤差範囲に収まってくれます。
問題は液体です。
普段、構造粘性(せん断がかかると粘度が下がる)を持つ流体を扱うので、世間一般の式がほぼ適用できません。社内では実験や実績からの経験式はもっていますが、ポンプなどの汎用機器に当てはめることは不可能に近く、デモでの確認が必要になります。現象論としてせん断が粘度に影響を与えるのはわかっていても、複雑な構造をしている流体機械の内部でせん断がどのようにかかるかなんて、データがあるわけないことが理解できない。設計図があって、液特性を提示すれば、ちゃちゃっとシミュレーションでもすればわかるとでも思っているようです。
そんな偉い人はメーカーに食ってかかったり、我々みたいな購買担当者にメーカーの質が悪いなどと責任転嫁したりします。見ていて恥ずかしくなります。
この時点でメーカーの営業担当者はやる気を喪失してしまい、メーカー責任を回避する思考に切り替わるので、値引きどころの話ではなくなります。
私は自分の世界だけで生きてる専門家崩れの偉い人は気に入らないので、彼らにとっては専門外の視点から責め立ててキレさせるように仕向けて、担当をはずしてもらうか、仕事を止める必然性をつくることにしています。ボールは常に相手に預けておく。若いときは無理してでも仕事を進めるのが正義と思ってた時期もありましたが、何も得することないのに悪い成功体験だけを残すことになるので間違いだったと今になって思います。