撹拌機マスターへの道 11
前回までで、概略的なことを説明しました。結局はノウハウだけど、それにしたって理論に従った検討が必要だということです。
今回からは芯振れについてです。
撹拌機の芯振れ対策はものすごく重要です。命にもかかわる事故につながるので経験に頼らずに設計段階でのチェック、試運転でのチェック、実運転でのチェックを欠かさないようにしましょう。
まずは、攪拌機の構成から確認します。
様々な形がありますが、私の中で標準的な形は次の図です。メーカーでいうと、佐竹マルチミクスをイメージしてしまいます。
上から、モーター、減速機、軸受、軸受、撹拌翼でシャフトがそれらを貫通している。そんな形です。モーターと軸受は固定されているので、軸受から先は固定されていないフリーの状態で、撹拌翼が錘の状態です。
基本的にはシャフトの芯を中心線とした線対称でなければ重心が傾いてしまい負荷がかかっていない状態でもシャフトは曲がろうとします。さらに撹拌翼の回転による遠心力で回転する撹拌翼の接線方向に力がかかり、シャフトが曲がろうとします。遠心力は
遠心力F=mrω2
F :遠心力 [N] m:回転物の質量 [kg]
r:回転半径 [m] ω:角速度 [rad/s]=2πn
n:回転数 [rps]
で表され、回転数は同じなので、質量の違い、回転半径の違いに比例した力の差がシャフトに作用することになります。
例えば、撹拌翼の重さが左右で10kgの差があり、240rpmで回転する場合に作用する力は1,579N(161kgf)となります。
1,579Nの力が片持ち梁の先端に集中して作用するのと同じことになります。
ベアリングから下のシャフト長さを2,000mm、太さ80mm、材質SUS304とした場合、
たわみ量δ1=(F×L3)/(3×E×I) =10.524mm
最大応力σ=(F×L)/Z=62.826MPa
となります。SUS304の耐力が205MPa以上となっているので、まだ耐えられます(塑性変形に至らない)。
回転数を1500rpm(60Hz地域の4Pモーターの回転数)としてみると、作用する力は61,685N(6,294kgf)となるので、
たわみ量δ1=(F×L3)/(3×E×I) =411.117mm
最大応力σ=(F×L)/Z=2454.368MPa
となるので、曲がって1500rpmに回転数を上げる前に曲がって大惨事になると思います。
今回は撹拌翼のバランスについて考えてみました。次回は芯出しについて考えてみます。